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コールサック80号掲載詩

柿狩りと栃の実       鈴木 比佐雄
 

 1
小さな庭には自然に生えた柿の木があり
春には柿若葉の緑があたりを新鮮にさせ
秋には渋い柿の実をつける
それでも小鳥たちが訪れて餌にしている
柿色は心に沁みてくる懐かしい色だ

食卓には親戚の田舎から送られた柿の実がある
果物ナイフを手に取り十字に切り裂き
4分の1の実の皮をむいていると
福田万里子さんの詩「柿若葉のころ」を思い出す
その詩の中で戦争末期に死んだ父が柿を手渡し
 柿もぐと樹にのぼりたる日和なり
 はろばろとして背振山みゆ
という中島哀浪の短歌を教えてくれたことが記されている
柿の木を見ながら背振山から見上げたことが
小さかった福田さんの父との最良の思い出だった

分からない野草があると福田さんに訊ねた
いつも丁寧に調べてくれ野草の命を手渡されるのだ
福田さんのマンションの花壇には
沢山の野草などの鉢植えがあり




スケッチした椿の絵が送られてきた
福田さんの命の時間が蕊の黄と花の赤と緑葉に残された
その椿の絵が『福田万里子全詩集』を飾っている
柿若葉色と渋柿色の両方を兼ね備えていた人を偲んでいる

 2
子どもたちが小さかった頃
春はキイチゴ狩り 秋は柿狩り
と名付けて手賀沼周辺の野原や里山の雑木林に
キイチゴや柿を採りにいったものだ
モミジイチゴやカジイチゴやニガイチゴを集めて
そのまま食べたりキイチゴジャムを作ったりもした
キイチゴ狩りは里山の宅地化が進み
残り少なくなってしまったが
今も春になると残された自生する場所を訪れ
くすんだオレンジ色のモミジイチゴの実を口に含んで
その少し苦い味を楽しんでいる

柿狩りには苦い思い出がある
近くの野原にたわわに実った柿の木がある
誰も取らずに落ち始めもったいないと思い柿狩りをしていると
「柿どろぼうなんかして、この土地は誰々さんのもの」
と近くの老婆にひどい剣幕で叱られ子どもと逃げて帰った
その後は柿狩りをやめてしまった
それから老婆は数年後に亡くなった
あの正義感がその場所を通るとまだ残っている

 3
和歌山の詩人から秋の果物や木の実が会社に一箱届いた
スタッフが帰った後に蜜柑箱を開いてみた
小粒の蜜柑は小結のように手になじんだ
銀杏の実は酒のつまみになる
殻付きの栃の実は縄文人が水で渋抜きをして
砕いて焼いてクッキーにして食べたのだろうか
和歌山の詩人は栃の実をなぜ送ってきたのか

「コールサック」(石炭袋)のバックナンバーや刊行書籍を並 べている
会社の本棚の一番目立つ場所を空けてみたくなった
まず賢治の銅像のペン立てを中央に置き
京都の詩人からもらった大きなどんぐりのオブジェ
岡山で求めた素焼きの太った山猫
そして栃の実などを周りに配した
すると賢治の「どんぐりと山猫」の世界が現われてきた
賢治の「石炭袋」の世界は白鳥座の近くにあるのではなく
本棚の片隅にも出現しているのだ
和歌山の蜜柑は甘酸っぱく
いつのまにか晩秋の深夜に縄文の風が吹いてきた
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  1. 2014/12/01(月) 13:10:12|
  2. 詩篇
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