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詩 五輪峠にはどんな山桜が咲いているか コールサック66号より

五輪峠にはどんな山桜が咲いているか
  ―京都・上京区・左京区の桜巡り                     鈴木比佐雄 


 1 ひまわり幼稚園
堀川沿いのホテルを出て
南へ川を下っていくと
二条城が見えてくる
早朝なので閉まっているが
花見客は開門一時間も前に並んでいた
堀の手前には
ひまわり幼稚園の桜がひときわ見事だった
六、 七本はあるだろう
桜の巨木の中に幼稚園があった
園庭の送迎バスが桜の下で静かに眠っていた
今日は四月四日の日曜日だった
明日は幼児たちがこの桜の木の下で
歓声を上げて遊び続けるのだろう
京都の詩人が回想していた幼稚園は
たしかこんな場所だったろうか
幼児になって桜花を見上げていた
花びらが五枚なのはどうしてと呟いてみた

 2 京都府庁旧館
府庁に長年勤めた人から旧館の桜のことを聞いた
その人の職場をぶらっと訪ねるように
守衛さんにその場所を尋ねて入っていった
旧館の中庭に見事な枝垂桜などの桜の園があった
あの人はこの桜を眺めるために
この職場に通ったのかも知れない
今年はベートーベンらしき楽聖や女性の裸体像が
桜木の側にコラボレーションされていた
その人のいた京都府庁の企画室は
あきれるほどミスマッチで大らかだ
桜木の下の無数の死者たちも
苦悩する人や裸体像を見上げているか
ユダの木といわれるハナズオウの花が
片隅で燃えるように咲いていた

 3 京都御所
早朝の皇居は白い砂利の中に埋まっていた
この砂利はいったいどこから運ばれたのだろうか
近くの鴨川や山奥から運ばれたのだろうか
きっとこの白さは特別な秘訣があるに違いない
主の不在な御所を訪れる人びとはこの空無のような
まっさらな砂利にあこがれているのか
五、 六人の英語を話す米国のおばさんたちが
桜木の前で代わる代わる写真を撮っていた
そのシャッターを切る音は永遠を切り刻んでいた
御所を抜けると同志社大学がある
韓国の詩人尹東柱の碑に手を合わせる

 4 鴨川
水の音に惹かれて鴨川の川原に下りる
水量は少なくこの水では京友禅は無理だろう
金沢の徳沢愛子さんの加賀友禅の詩を想起する
犀川(男川)と浅の川(女川)の友禅流しは
鴨川から伝えられたそうだが
いま目に映るのは、残された水に遊ぶ鴨の群れだ
川原を歩く人びとはこの日を待ちわびていたらしい
誰もがにこやかだ
車椅子を押す家族の姿も多い
病を抱えた家人を励まして
桜咲く川原を散策することを夢みてきたのだろう
この日まで命のあったことを感謝している
人々の晴れやかな表情を見ていると
人の心に天国があるなら
きっとこのような心持ちの瞬間なのだろう
生きものには命をリセットさせる知恵がある
ベンチに腰掛けて鴨川の流れを聞いていた

 5 松ヶ崎浄水場
北終公園で待ち合わせた人との時間に遅れないために
鴨川をもっと上っていきたかったが
鴨川が加茂川と高野川に分かれていく賀茂大橋を右折し
今出川通りを歩いていく
京都大学農学部の桜や湯川館に立ち寄れなかった
京都の街に流れる疎水脇には桜並木が続いている
そんな脇道の桜並木に紛れ込んで行きたかった
それを眺めていると時間はいくらあっても足りない
白川通りにぶつかり哲学の道に右折して行きたいが
左折して北終公園に向かう
待ち合わせた人と銀月アパートの枝垂桜を脇に見ながら
柊神社を経由して松ヶ崎浄水場の桜並木に向かう
永遠に桜並木は続いていくような錯覚を起こす
桜狂いとはこの世の全てが桜になってしまった場所を
あてもなくさ迷うことなのかもしれない
傍らの人は巨木の桜の木の下に入り込み
五音階の木製の笛を取り出し吹きだした
その笛の調べが桜花の枝をすり抜け
天に向かって流れていった
数年前に小岩井農場で見た賢治の詩の老木を想起した
賢治の憧れた五輪峠にはどんな山桜が咲いているか
桜のむせかえる街の中で
そんな山桜を見たいと願っていた
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  1. 2010/05/10(月) 14:10:14|
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