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細胞と遺伝子の殺人者   ―北柏ふるさと公園にて

細胞と遺伝子の殺人者
  ―北柏ふるさと公園にて  鈴木 比佐雄



 1
沼の水平線に朝日が浮かび
その光が水面をわたって野原に届く
クローバーの夜露の電球に
いっせいにスイッチが入る
電球は眠りから覚めて
太陽の子を孕んだ朝露の白色電球になる

 2
沼のほとりの野原では
紫花のホトケノザの露
白花のナズナの露
桃色花のヒメオドリコソウの露
黄花タンポポの葉の露
白花タンポポの葉の露
紅紫色のカラスノエンドウの露
小さなツリー状の草草の露が
いっせいに白色電球を灯される
野原は白色光のジュウタンになる
野原の周りの樹木たちも葉にも
あまたの露が乗り光り輝く
そんな朝露の光に濁りはあるだろうか
 3
かつてこの公園内にあるジャブジャブ池で
子どもたちに水着を着せて遊ばせた
いまも夏の光の中で子どもたちの歓声が響いてくる
水辺で子どもたちが掛け合う水しぶきが
むすうの虹になって目の前に甦ってくる
むすうの朝露の中に反射してくる

 4
朝陽が家の屋根にも届く
太陽光発電が開始されて
炊飯器にスイッチを入れて
白米が炊かれているだろう
人は自分に必要な分だけ発電して
その恵みを感謝すべきだろう

 5
三年前の三月にこの沼とこの公園内の野原にも
二〇〇㎞離れた核発電所からセシウム混じりの雨が降った
この公園にもセシウムが降りそそいだ
二〇一二年九月になっても植え込みから
1万5292ベクレルが検出された
その年の一二月にようやく除染が実施された
人は在り得ない事実を突き付けられる時に
ようやく現実を変えていく存在なのだろうか
子どもたちは一年半もの間にどれだけ被曝したのだろうか

 6
沼の留鳥になった白鳥親子、シラサギ親子たちは
沼の水草や小魚などを食べて生きている
食べたベクレル数だけ細胞が壊されている
二〇〇㎞先の柏に放射性物質が
風雨と共に降りそそいだのは必然性がある
核発電所近くを通る国道六号線や常磐線を上っていくと
柏に到着することになっていたのだろう
空飛ぶ風雲雷神も風の又三郎も被曝させてしまったのだろう

 7
四次元の視線を持ち
みんなの本当の幸せを願った賢治なら
作業員を被曝させてしまう不幸な核発電を
子どもたちの細胞を破壊してしまう核発電を
稲作も畑作もできなくさせる核発電を
鳥も昆虫も小動物も魚も木々も野草の
遺伝子を破壊してしまう核発電を
けっして認めないだろう

 8
故郷を破壊されて帰還できない人びと
放射能が高い場所でも暮らす他ない人びと
核発電事故で運命を変えられてしまった人びと
そんな人びとに朝露のエネルギーが届くことを願う
核発電を再稼働させて破滅的な未来を引き起こす人びとは
子どもたちの細胞と遺伝子を破壊する殺人者であり
核発電の近くの人びとの人権と
生存権を否定する反民主主義者だ
あまたの活断層がいまも動き出そうとしている日本列島で
最善のリスク管理は核発電を再稼働させないこと
朝露のエネルギーで暮らすこと
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  1. 2014/05/02(金) 16:42:20|
  2. 詩篇
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「コールサック78号」編集後記

「コールサック78号」編集後記          鈴木 比佐雄

 東日本大震災・東電福島第一原発事故から四年目を迎えて、日本社会が本当に原発事故の抱えている本質的な問題を直視しているのか、疑問に思えてきて暗澹たる気持ちになってくる。原発事故当時は、原発にほとんど無関心であった人も、福島に依存していたことを反省して脱原発に傾いたが、東京都知事選でも明らかのように福島を忘れたがっている人びとも多くなっている。私の父母の田舎は福島県の浜通りのいわき市薄磯・豊間で、子どものころ夏休みになるといつも海辺の小さな町に遊びに行き長期滞在していた。一九七〇年の夏に行った際に伯父夫婦が、来年には原発が稼働することを恐々と話していることを今もよく想起する。高校生の私が原発や原爆に関する新聞記事を切り抜くことになったのは、福島第一原発の稼働によるものだった。特に一九九九年に東海村でのウラン燃料の臨界事故には衝撃を受けたが、その前から原発は小さな事故を繰り返していたし、当初の三十年の廃炉が四十年~六十年にも延長されようとし、原子炉の老朽化の真実が伝えられていないことがとても心配になった。私にできることは詩「一九九九年九月三十日午前十時三十五分」、「二十世紀のみどりご」、「シュラウドからの手紙」などの詩篇を書くことだった。二十四時間営業のコンビニの光を見る度に、「ああ、ここは 光の墓場だったか」と感じ、福島の人びとに原発の恐怖感や危険性を押し付けていることへの贖罪感のようなものを抱いていた。いつか必ず到来する破滅的な痛みのような思いが私の福島へ関わる原点になった。その後に『脱原発・自然エネルギー218人詩集』などを企画・編集することになったのもその思いに促されたからだ。福島に関わる視点をもう一度自らに問い直し、地域環境・コミュニティの問題、文化・文明・民主主義の根幹に関わる問題、自己のライフスタイルの切実な問題として一人一人に問われているのだろう。
 三年前の二〇一一年三月三月末頃にようやく福島市に避難していた南相馬市の若松丈太郎さんと連絡が取れて『福島原発難民 南相馬市・一詩人の警告 1971年~2011年』の編集・製作を開始した。おかげさまで今年の三月十一日の奥付で二版目を刊行することができた。この評論集の初版三〇〇〇冊が三年間かけて完売したのは、画期的なことだ。一般の読者が若松さんの一九七一年から四十年間も警告してきた原発の危険性に寄せる論考や詩篇に本物の価値を見出してくれた。若松さんの現実を徹底して直視しながら、民主主義の根幹を問い続ける粘り強く、飾らない誠実な文体の魅力に心ある人びとが少しずつ気づいてくれたからだろう。二版目が出た後も愛知県の高校のゼミのテキストに使用するので、二十冊ほど購入があった。このように原発事故の本質、歴史的な視点、今後どのような教訓としていったらいいかを論ずる際に、高校生にも読ませたい最適なテキストだと考えているようだ。また福島県はもちろんだが全国の支援者たちもこの本をテキストに使用して広めてくれている。二〇一二年十二月に刊行した『福島核災棄民―町がメトロダウンしてしまった』、そして今年の三月十一日には『若松丈太郎詩選集一三〇篇』を刊行した。若松さんの第一詩集『夜の森』から最新作まで収録されていて、若松さんを知るにはこの詩集を読まれることをお勧めしたい。本号に詩選集の私の解説文も再録したのでお読み頂ければ幸いです。  
 今年になって若松さんの二冊の他に、福島の詩人・評論家の本の発行が続いた。浪江町の詩人で相馬市に避難している根本昌幸さんの詩集『荒野に立ちて―わが浪江町』、いわき市勿来で多くの悲劇を目撃した青天目起江さんの『緑の涅槃図』、南相馬市出身で今は仙台市に暮らす堀内利美さんの図形詩集『人生の花 咲き匂う』、いわき市江名の評論家である新藤謙さんの評論集『人間愛に生きた人びと ―横山正松・渡辺一夫・吉野源三郎・丸山眞男・野間宏・若松丈太郎・石垣りん・茨木のり子』、会津の農民詩人の前田新さんの評論集『土着と四次元 ―宮沢賢治・真壁仁・三谷晃一・若松丈太郎・大塚史朗』などは、震災・原発事故を経験した福島の詩人・評論たちの現場からの感受性と思想性が蓄積され重層化された詩集と評論集だ。浪江町に帰還することを願う根本さんの詩集は涙なくして読めない。柱を喰って死んでいった牛たちへの思いも痛切だ。震災後に最愛の妻を亡くした堀内さんは、ライフワークの英語図形詩を豊かに創造し、最後に妻への鎮魂歌を賢治のように詠いあげている。三十代の詩人の青天目さんは流された多くの人びとが眠る故郷の山河を涅槃のように感じて生きている。新藤さんは戦争中に中国大陸で人体実験などを拒否し最前線にやられた医師横山正松の生涯を記した評論を冒頭に掲げた。国家・軍部の命令を拒否し人間愛を貫き生きた思想家を論じている。横山正松は戦後、福島大学で教鞭をとり原発に対しても人類的な観点で反対を主張していた。前田新さんは宮沢賢治を原点として東北・北関東の農民詩人の土着の系譜を書き記した。中でも賢治の「四次元」を実践的な観点で自らの生き方の指針としてきた論考はとても説得力がある。
 また昨年は福島県須賀川市の俳人永瀬十悟さんの句集『橋朧―ふくしま記』や宮崎直樹さんの俳論集『名句と遊ぶ―俳句バイキング』などを刊行して、二冊とも書店で少しずつ読者を得ている。二人とも私とほぼ同じ年齢で俳句を愛する純粋な思いが創作や評論から感じられて読者との垣根を越えていくのだろう。今年になっても長澤瑞子句集『初鏡』、原詩夏至歌集『レトロポリス』を刊行した。長澤瑞子句集は、息子の弘明さんと一緒に九十歳を越えた母の句を編集した。この句集は幾つかの新聞や俳句誌にも紹介されている。年を経てからしか気付くことができない深い感情や物の見方が宿っている。原詩夏至さんは詩・俳句・短歌・小説を書いている表現者だ。どの表現もその分野の特長を生かした高度なレベルで四つの境界を楽々と越えていくことはとても興味深い。
 それから戦後詩の口火を切った福岡県の詩誌「鵬」(「FOU」)の創刊同人だった吉木幸子さんの遺稿詩集『わが大正の忘れな草/旅素描』を刊行した。吉木幸子さんの解説を書きながら戦前・戦中・戦後の独自のモダニズム詩を追求した詩人とその周辺の詩人たちの足跡を辿ることができた。
 現在『水・空気・食物詩集350篇』を追加公募中だ。詩人が生きている地域の「水・空気・食物」を描いた詩篇でぜひご参加下さい。
 また七十六号より三号分の七十八号までの年間購読者になって頂きましたが、七十九号からもまた継続して年間購読者になって頂ければ幸いです。別便でご案内させて頂きますので、宜しくお願致します。今号にも多くの詩やエッセイ・評論や書評などをご寄稿下さり感謝致します。次号の締め切りは六月末日となります。


  1. 2014/05/02(金) 16:40:25|
  2. 編集後記
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